最初に言っておくと、今回の記事は非常にわかりづらいので、マジックのうんちくについて詳しくない人にとっては難しい内容かもしれません。

思い出語りついでに赤単を語らせるとこうなる、という感じでお読みください。


●七瀬の思い出

青いデッキを使ってばかりいる七瀬ではありますが、およそ小学生~中学生の間は単色のアグロデッキを相手に練習を積んでいたので、白単、黒単、赤単、緑単の4つの高速デッキについても、構築や調整を含めた感覚的なところには自信があります。

特に熱心にやっていた時期は、ラース・サイクル(テンペスト+ストロングホールド+エクソダス)~ウルザ・ブロック(ウルザズサーガ+レガシー+ディスティニー)のスタンダードシーンからの数年間ですので、単色デッキ全盛期であり、切れ味鋭い高速デッキが多数存在しました。

いくつかのコンボ・デッキはあっという間に禁止指定されていきましたが。あの年齢でMoMaを回していたかと思うと、自分でもちょっと不思議な感覚になります。

※MoMa : 精神力/Mind Over Matterの略称。 マジック史上最強クラスのコンボデッキ。最終的に6種類ものカードが禁止カードに指定された。参加者のほとんどがMoMaを使用し、最速1ターンキル、なくても2~3ターンで決着がつくという「MoMaの冬」と呼ばれる環境を生み出した。禁止指定のたび、《トレイリアのアカデミー》で大量のマナを生み出す初期型から、ドリームホール型、実物提示型、としぶとく生き残り続けたあたりはデッキの凶悪さを物語っている。

…さて、少し話はそれましたが、今日はMoMaやらメグリムジャーなどの凶悪なコンボデッキの思い出語りをする日ではなく、今ではアグロなどと称されるデッキ、そのなかでも単色デッキに焦点を当てたとき、現在特に一定の地位を確立している「赤アグロ」について少し書こうかと思います。

単色のアグロ系デッキを語る上で欠かせないのが、当時のスタンダード環境を象徴する、テンペストのこれらのカードです。


呪われた巻物/ Cursed Scroll (1)
アーティファクト
(3),(T):クリーチャー1体かプレイヤー1人を対象とする。カード名を1つ指定する。あなたの手札からカードを1枚、無作為に公開する。そのカードが指定されたカードであった場合、呪われた巻物はそれに2点のダメージを与える。



不毛の大地 / Wasteland
土地

(T):あなたのマナ・プールに(1)を加える。
(T),不毛の大地を生け贄に捧げる:基本でない土地1つを対象とし、それを破壊する。



《呪われた巻物》による「ババしかないババ抜き」は環境を大きく加速させ、《不毛の大地》は多くの多色デッキ、コントロールデッキをつぶしてくれました。

《呪われた巻物》はブロック構築で禁止カードに指定されたほど強力な1枚。多くのアグロ・デッキが採用し、相手のターンエンド時に《火炎破》のコールをかけるのがお約束になっていたこともありました(ブラフの可能性も高いので「みーせて!」と言うのもお約束)。

初めての日本語版として有名な第4版に収録されていた《露天鉱床》というキチガイカードも大概でしたが(すぐに禁止カードになった)、その調整版であるこの《不毛の大地》はスタンダードシーンに残り続けていたのです。

まず、この2枚が単色アグロを成立させる大きな要因となっていたのは間違いありません(どの色のデッキにも入るわけですから)。

特に恩恵を得たのは、

・ 黒アグロ (黒ウィニー、スーサイドブラックなど)
・ 赤アグロ (スライ、バーン)
・ 緑アグロ (ストンピィ)

と呼ばれるデッキです。(白単に関しては《浄化の鎧》を使ったデッキが多かったため、デッキとして噛み合わなかった。)

緑単の「ストンピィ」に関しては、現在の晴れる屋のオーナーである齋藤友晴さんが、高校生の時にMTG歴わずか数か月でThe Finals99直前予選を通過し、本選でも勢いそのままに優勝したのは、よく覚えています。特に福島のプレイヤーということで、当時、東北勢のジュニアプレイヤーであった七瀬にとってはビッグニュースだったのです。

彼が優勝したときは既にラースサイクルは既にスタンダード落ちし、メルカディアン・マスクス加入後ではありましたが。

マッド・リンデ(Matt Linde)が世界選手権99で使用したストンピィは「World Championship Decks 1999」という名前で製品化されています。金枠で販売された4つのデッキの中でも、カイ・ブッディ(Kai Budde)の赤茶単ばかりが人気でしたが、それぞれのリストをみれば一目瞭然、すべて単色デッキであり、《呪われた巻物》がすべてのデッキに3枚以上投入され、2つのデッキに《不毛の大地》が4枚投入されています。

更に古くは、《冬の宝珠》を使った「セニョールストンピィ」なんてのもありましたが。

…また話がそれましたが、今日は赤単の話でしたね。

クリーチャーに関しては、現代のほうがよほど強力なものが揃っており、あえて《ジャッカルの仔》や《モグの狂信者》といった当時の赤い1マナクリーチャーを、ここで改めて紹介する必要もないでしょう。しかし、当時はこれらが非常に強力な1マナクリーチャーであり、それを収録していたテンペスト加入後のスタンダードは、「スライ」と呼ばれる赤い単色デッキが全盛期の時代でもありました。

さて、ここからが本編です。


●「スライ」という名の赤アグロ

「スライ」というのは、ジェイ・シュナイダー(Jay Schneider)という人物がマジック黎明期に生み出した赤アグロデッキで、本来は「ギーグデック」と呼ばれるものが最初。ポール・スライ(Paul Sligh)がこれを使いプロツアーで2位の好成績を残したことにより、インターネットの普及もあいまって、そう呼ばれるようになったとのこと。これはテンペスト発売よりも2年ほど前のものです。以降、「スライ」と呼ばれる赤い高速デッキが徐々に認知されるようになったのですが、特に多くのプレイヤーが赤単の理想形として挙げるのは、デイビッド・プライスが1998年のプロツアー・ロザンゼルスに持ち込んだ「デッドガイ・レッド」でしょう。

よくご存じの方は「出た、デッドガイ・レッド(笑)」と思ったはず。

ここら辺の話はこちらが非常にわかりやすいので、興味がある方はぜひご覧ください。

浅原・小室の匣の中のマジック by 浅原晃 (2008/12/31) ※アーカイブ記事
http://web.archive.org/web/20111123025529/http://mtg.takaratomy.co.jp/others/column/asahara/20081231/index.html

MTG公式記事 赤単リマスター by Gavin Verhey (2015/5/12)
http://magic.wizards.com/ja/articles/archive/reconstructed/ja_rc_20150512

この「デッドガイ・レッド」はプロツアー優勝という成功を収めたわけですが、それ以上に多くのプレイヤーに影響を与えたデッキなのです。このデッキもまた「スライ」という名でスタンダード版のデッキが作られ、当時数少ない日本のMTGの情報誌などでも紹介されることになりました。赤い高速ウィニーデッキを「スライ」と呼ぶのはこのためです。

「スライ」というデッキは、赤アグロを使うプレイヤーのすべての基礎が詰まっている象徴的なデッキです。特に「マナ・カーブ理論」という、リミテッドでもお世話になる理論がありますが、ジェイ・シュナイダーこそこの「マナ・カーブ理論」の提唱者なのです。

まぁ、今日はこの話を少ししたかったわけです。

ちなみに七瀬がMTGに復帰した際に、「アグロ」「ミッドレンジ」「コントロール」という3種類の速度による分類を見たときに、不思議な感覚になりました。それほどまでに、黒といったら「スーサイド」、赤といったら「スライ」、緑といったら「ストンピィ」というのが身にしみついていたのでしょう。


●マナ・カーブ理論

マナ・カーブとは、デッキを点数で見たマナ・コスト別に並べ、それぞれに含まれるカードの枚数をグラフにしたときに描かれるカーブのこと。

「そのターンに出し得るマナをムダなく使うには、どうしたらいいのか?」

という着眼点から、追究されたものです。

DiaryNote的には、こちらの翻訳記事が参考になるかもしれません。

【翻訳】理想的なマナカーブをコンピュータにシミュレートしてもらった件について/Finding the Optimal Mana Curve via Computer Simulation【CFB】
http://regiant.diarynote.jp/201408041706199879/

しかし、「マナカーブ理論っていうのはイマイチわかりにくい」という感想をもった方も多いのではないでしょうか。

「結局、何マナを何枚いれればいいのさ?」

それもそのはず、テンプレというものが基本的には存在していないのです。本質的に理解できないといけず、指標がないわけです。つまり、どのマナの呪文を何枚いれればきれいなマナカーブが描けるか、基本的には正解はないのです。

もしテンプレを挙げるとするならば、デッキ60枚、単色、マナ加速なし、という条件で、

1マナ 08枚 ********
2マナ 09枚 *********
3マナ 11枚 ***********
4マナ 05枚 *****
5マナ 03枚 ***
土地  24枚

よくWIKIとかに載ってるやつですね。

しかし、この通りに組んだデッキが強いかというと、別にそういうわけではありません。

こういった考えを基本として、その追究の末に考えられたのが「スライ」と呼ばれる赤アグロ・デッキなのです。


●七瀬にとっての赤単

七瀬にとっての赤単というのは、軽いクリーチャーを並べて殴り、あとは火力で焼き切るデッキ、というものではありません。構築の段階から非常に綿密なマナカーブの追及があって、その結果出来上がった美しい芸術品のようなものです。日頃、赤単に対して敵意剥き出しでサイドボードなどで対策をとっていますが、別に赤単が嫌いなわけではありません。適当に構築された赤単や、追求を怠ったコピーデッキが多く、それでもそこそこに勝ててしまうのが赤単。そういう赤単に負けるのが心底嫌なだけなのです。

そして、自分で赤単を使うことが少ないのは、赤単に対する対策の取られやすさと、他のデッキに対する対策の取りにくさが顕著なデッキだからです。

対策のとられやすさとして、例を挙げると、自分が青白系のコントロールデッキを使っていたときは、サイドには必ず《赤の防御円》は最低でも3枚は投入していた記憶があります。場に出されると、赤単側はそうとう厳しい戦いを強いられることになります。

まぁそうは言っても、対策が取られていない新環境初期には非常に強いのが赤単だというのも間違いないでしょう。そういったメタ読みが、マジックの面白さでもあるのです。

「じゃあ、そんなお前が赤単を組むとどうなるの?」

次回からは七瀬が考える赤アグロの構築編を書こうと思います。

コメント

minato
2015年8月26日19:14

赤単(・∀・!

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