戦乱のゼンディカーレビュー⑤総合注目度ベスト10
2015年9月26日 Magic: The Gathering七瀬が個人的に注目しているカード、ベスト10とその理由を徹底的に書きます。
●その前に…
リリースノートが出ていますので、みんな見てね!
『戦乱のゼンディカー』リリースノート
http://mtg-jp.com/rules/docs/faq_bfz_j.html#
●各カード分析
さて、順番に行ってみましょう!まずは第10位から!
第10位 停滞の罠
スタンダードシーンにおいて久しくの間、白のインスタント除去というのは不遇でした。というのも、《剣を鍬に》という強力な除去が消えてしばらくして、《流刑への道》というあまりに強いカードを登場させてしまったために、白本来の役割以上に除去を強くしてしまうとどうなるのか、十分にわかってしまったからです。様々な条件をつけて白の除去を登場させましたが、現在のスタンダードで最も使われているのは《勇敢な姿勢》という条件付き除去です。
今回登場した《停滞の罠》というカードは、ダブルシンボルではあるものの、インスタントタイミングで使えるクリーチャー追放呪文です。それは3マナを構えることで、「カウンター」か「除去」を選ぶことができる、に相違ありません。
旧環境であれば《解消》と《英雄の破滅》を構えるこの動きは、青黒コントロールないしエスパードラゴンの動きであるのですが、新環境ではこれが《風への散乱》と《停滞の罠》を構える動きに代わっていくでしょう。これがスタンダードな動きになるのであれば、エスパードラゴンは無理に青黒タッチ白という形にこだわる必要がなくなり、青白タッチ黒という形になります。純粋なコントロールの基本は青白、という変化は大きいものかと思われます。
心配なのは、《ドロモカの命令》といったカードで対処されてしまうのではないか、という問題があります。しかし、そのカードを採用しているデッキの多くは《搭載歩行機械》も採用しており、こちらに1枚《停滞の罠》を使用することで、生け贄に捧げたくない《停滞の罠》を残すことができます。
3マナというマナ・コストを重いと考えるか、軽いと考えるかはその人次第かとは思いますが、《嵐の息吹のドラゴン》がローテーション落ちした今だからこそ、この新たな白い除去はスタンダードシーンでよくみかけることになる除去となるでしょう。
第9位 破滅への道
《英雄の破滅》がなくなった代わり、という目線で語られることになる《破滅への道》。その大きな違いはインスタントがソーサリーになったこと、そして覚醒がついたこと。
まず、インスタントがソーサリーになったことは大きすぎる変更です。コントロールデッキは、出る前から対処するという動きを、出てから対処するという動きに変更せざるをえません。《カマキリの乗り手》が出てきたとき、それが殴ってくるのを止めることができないのです。ソーサリーになっても問題なく運用できそうなのは、優秀なインスタント除去である《アブザンの魔除け》を有するアブザンというデッキでしょうか。先ほど紹介した《停滞の罠》を選ぶこともできますが、デッキの性質上、《破滅への道》を選んだほうが得が多いはずです。
覚醒がついたことによるアドバンテージは、活かし甲斐があります。7マナで覚醒4というのはかなり重く感じますが、相手のニッサを処理しながら、不要な土地を走らせるという動きは非常に強力です。コントロール使いは、覚醒を上手に使いこなすことによってスタンダードシーンを戦い抜くことになるでしょう。この覚醒という新能力により、注目を集めているのが、これから紹介するカードたちです。
8位 ハリマーの潮呼び
今回のフルスポイラーを見て、七瀬が最も心躍らせたカードがこちらです。アンコモンの中でも注目度では最高順位をつけさせてもらいました。
現在のスタンダードでは《棲み家の防御者》を5マナでプレイし、必要なカードを回収してくる動きが非常に強力です。違ったアプローチではありますが、《ヴリンの神童、ジェイス》がソーサリーやインスタントを再利用するのもやはり強力であり、墓地のカードを柔軟に再利用するという意味ではこの2枚が抜けて強力だと思います。そこに新たなカードが追加される可能性が、あるのです。
まず、3マナ2/3というスペックは、文句のつけようがありません。そして、土地・クリーチャーに飛行をもたせます。なにより、「覚醒をもつ呪文を手札に戻してもよい」のです。
今回のセットで新たに登場した覚醒もちの呪文、特にコントロールデッキなどで使用できそうな呪文には、どのようなものがあるのか見ていきましょう。
白:次元の激高 3白白 ソーサリー 全体除去
白:真っ逆さま 2白 ソーサリー 限定単体除去
青:掴み掛かる水流 青 ソーサリー 単体バウンス
青:氷の猛進 青 ソーサリー 単体足止め
青:水の帳の分離 4青青 ソーサリー 追加ターン
青:風への散乱 1青青 インスタント 打ち消し
黒:湧き上がる瘴気 3黒 ソーサリー 全体マイナス2修正
黒:破滅の道 1黒黒 ソーサリー クリーチャーorPW単体除去
赤:沸き立つ大地 1赤 ソーサリー 全体1点火力
緑:大地の武装 1緑 ソーサリー +1/+1カウンター2個置く
白青:乱動の噴出 1白青 ソーサリー トップバウンス
他にもちょいちょいありますが、主にこんな感じ。環境で有力そうな、カウンター、除去、スイーパー、バウンスが揃っています。《修復の天使》のような明滅があれば申し分ありませんが、そこまで贅沢はいえませんね。
覚醒という能力はおそらくはスタンダードでしか目立った活躍はできないでしょうが、こういうスタンダードならではの能力というのは七瀬が非常に好むカードです。
例えばエスパードラゴンに「覚醒」というキーワードを採用すると…
1マナ 《掴み掛かる水流》
2マナ 《ヴリンの神童、ジェイス》、《深水の大喰らい》、《シルムガルの嘲笑》
3マナ 《ハリマーの潮呼び》、《風への散乱》、《乱動の噴出》、《破滅の道》、《苦い真理》
4マナ 《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》、《オジュタイの命令》、《完全なる終わり》
5マナ 《龍王オジュタイ》、《命運の核心》、《次元の激高》、《灯の再覚醒、オブ・ニクシリス》
6マナ 《龍王シルムガル》、《漂う死、シルムガル》
8マナ 《時を越えた探索》、《精霊龍、ウギン》
Xマナ 《意思の激突》
特殊地形 《精霊龍の安息地》、《乱脈な気孔》
という感じに。
例えばスゥルタイコントロールに「覚醒」というキーワードを採用すると…
1マナ 《掴み掛かる水流》
2マナ 《ヴリンの神童、ジェイス》、《棲み家の防御者》、《深水の大喰らい》
3マナ 《ハリマーの潮呼び》、《風への散乱》、《破滅の道》、《苦い真理》、《スゥルタイ魔除け》
4マナ 《深海の主、キオーラ》、《血の暴君、シディシ》、《衰滅》
5マナ 《囁きの森の精霊》、《灯の再覚醒、オブ・ニクシリス》
6マナ 《黄金牙、タシグル》
8マナ 《時を越えた探索》、《精霊龍、ウギン》
Xマナ 《意思の激突》
特殊地形 《伐採地の滝》
という感じに。
新しい2色土地と合わせて、面白い方向にアーキタイプが強化されたのではないでしょうか。
あとは、なんといってもイラストがきれいで良いよね!Foil無限回収しますので、当たったらぜひ七瀬までお持ちください!
第7位 深水の大喰らい
厄介な2マナ生物というのは、いつの日も強力なものです。特に《オジュタイの命令》や《コラガンの命令》といった、簡単にアドバンテージを稼げるカードがあれば尚のこと。そういう状況で現れたのが、こいつです。
地上のクリーチャーを邪魔しつつ、後半にはドローモードが使えるというのは、コントロール使いにとっては朗報。先ほどの2つのデッキ案にも候補として提示するだけの強さがあります。
そして欠色というのは、自分で使うぶんには《精霊龍、ウギン》と相性が良いです。場を流したあとに接死とドローソースが残っている、というのは結構な悪だと思われます。
同じマナ域に《ヴリンの神童、ジェイス》がいるため、共存できるかどうかがポイントとなりそうですが、弱いカードでないことはたしかですね。
第6位 下生えの勇者
アドバンテージの塊である《クルフィックスの狩猟者》がいなくなったと思ったら、また変なクリーチャーがやってきました。こちらはアドを稼ぐようなものではありませんが、とにかく高い耐性が特徴です。抜本的な除去に耐性はありませんが、赤いデッキだと対処が難しいはずです。
4ターン目に勇者を出して、フェッチ起動で4/4にまで育ちます。コンバットで1:1交換が取れないので、除去を当てられさえしなければ、次のターンからもしつこく場に残り続けます。
相性の良いカードは、+1/+1カウンターを乗せながら格闘できる《ドロモカの命令》や、+1/+1カウンターを2個上乗せできる《アブザンの魔除け》、あとは一部の熱狂的なファンをもつ《硬化した鱗》や、+1/+1カウンターを参照する《毅然さの化身》あたりでしょうか。《抵抗の妙技》で守りながら強化する、というのも厄介な動きですね。
ただ、コントロールデッキ向きなカードかと問われれば、そうでもないため、ダブルシンボルである点も考慮すると、多くのデッキで採用されるカードではないかと思います。
第5位 マラキールの解放者、ドラーナ
「ドラーナ」というアーキタイプを生み出す可能性が高い、非常に強力なレジェンドです。3マナ2/3飛行というのが強いかどうかは別として、全体に+1/+1カウンターを乗せていくその姿は、まさにデッキの中心でしょう。特に《搭載歩行機械》や《荒野の確保》、《ドラゴンの餌》といったトークン生成系のカードと相性が良く、それらのカードは《真面目な訪問者、ソリン》や《嵐の憤怒、コラガン》とも相性が良いので、デッキの方向性がわかりやすいですね。もしドラーナ自体がやられてしまったとしても、《コラガンの命令》といったカードで回収できます。また、このアーキタイプならば、《大いなる狩りの巫師》といったカードにも再び注目が集まるのではないでしょうか。
第4位 忘却蒔き
まず、すべてのデッキに入れることができます。
次に、土地を伸ばすことができます。場合によってはフェッチランドやミシュラランドも奪うことができます。
そして最後に、そもそも本体が5/8です。
以上の点から、多くのデッキに採用される可能性があるカードです。
上陸というキーワードとも相性が良く、例えば土地を4枚出すことができれば、《下生えの勇者》は+1/+1カウンターを4つ積み上げることができ、《マキンディの滑り駆け》は+4/+4修正を受けます。フェッチランドが混ざっていれば、更に修正が追加されるわけです。「ゼンディカーvsエルドラージ」に収録されたこの神話レアは、潜在価値は非常に高いと思われます。
第3位 新デュアルランド
なんか色々な呼ばれ方をしていますが、これらの土地の登場により、2色デッキと4色デッキが大幅に強化されます。フェッチランドの利用価値も大幅に向上しており、序盤の土地の並べ方が以前よりも難しくなることは請け合いです。
第2位 新ミシュラランド
対抗色ミシュラランドの2枚は、今後のスタンダードシーンにおいて、特に次のセットが発売されるまでの間、かなりの活躍が期待できます。いつの時代も、クリーチャーに変化する土地というのはあらゆるシーンで活躍しつづけ、その強さというのは間違いのないものです。そんなミシュラランドが、青緑と、白黒限定で使えるのです。
一方のデッキにミシュラランドが入っていて、もう一方のデッキには入っていない場合、消耗戦を制するのは間違いなく「入っているほう」です。
《伐採地の滝》は呪禁もちの3/3。攻撃時の回避能力に乏しいものの、除去に強く、ミシュラランドとしては理想的な部類です。
《乱脈な気孔》は絆魂もちの2/3。こちらも回避能力に乏しいですが、序盤に減らされたライフを回復してくれるというのは、コントロールデッキにとって、ありがたいものです。
どちらも回避能力がないため、例えば《ハリマーの潮呼び》が場に出ていると使いやすそうには見えます。
覚醒により+3/+3ないし+4/+4されたミシュラランドは異常な強さをもちます。ただし、呪禁でなくなる瞬間があったりするので、個人的には《乱脈な気孔》を覚醒させるのが、スタンダードでは強いんじゃないかと思っています。特に、《破滅への道》や《次元の激高》とは好相性で、覚醒4されれば、とりあえず4/4クリーチャー、起動すれば6/7絆魂という化け物の完成。試合を決めるには十分なサイズです。
《伐採地の滝》と覚醒を組み合わせるなら、インスタントタイミングで覚醒が可能な《風への散乱》でしょうか。3/3クリーチャーに変化し、起動すれば6/6呪禁に変化可能になります。
最後に、ミシュラランドを評価している理由は、覚醒との組み合わせもそうなのですが、何よりプレインズウォーカーに触ることができるという点です。《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》に関しては、ブロッカーを用意できるので難しいかもしれませんが、残りの2体は殴って倒すことができます。コントロールデッキにとって、殴ってPWを倒せるというのは重要なことなのです。
第1位 プレインズウォーカー
こういう選び方はズルい!と思われた方。安心してください。ほとんどは、《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》の評価点です。この化け物の登場により、《太陽の勇者、エルズペス》を失ったデッキたち、特に青白コントロールというデッキは最前線で戦えるレベルに強化されますし、雑に強かったアブザンやジェスカイにもなんとなく、入れることができます。ゼナゴス先生は赤緑だったからデッキを選んだのに、この人は白いだけです。《英雄の破滅》が無くなり、《異端の輝き》も無くなった今、プレインズウォーカーが弱いわけがないのです。ついでに《思考囲い》もないからね。
《深海の主、キオーラ》は色を選ぶものの、デッキのバランスを調整できれば十分に活躍が期待できるカードです。青緑というカラーも、《ヴリンの神童、ジェイス》と《巨森の予見者、ニッサ》というオリジンのトップレアたちと非常に相性が良く、青緑系のデッキがトップメタに食い込んでくるの日は近いでしょう。
《灯の再覚醒、オブ・ニクシリス》に関しては、上の2枚よりもずっと評価は低く見ています。というのも、5マナで出すPWのスペックとしては、低めだからです。ただ、サイドボードに1~2枚取られたりするカードではあると思うので、ある程度の活躍は期待できるでしょう。
今回プレインズウォーカーを1位に選んだ理由は、それらへの対処方法の少なさです。《英雄の破滅》から《破滅への道》になっただけでも不安要素しかないのに、例えば《危険な櫃》は無いですし、《頂点捕食者、ガラク》というお化けもどっかにいきました。《払拭の光》は瞬速を持ちましたがクリーチャー限定になり、残っているのを考えると《完全なる終わり》とかそこらへんのカードぐらいです。プレインズウォーカーへの一番の対処方法は、「殴って倒す」なのですが、新たに登場した3体とも、自衛手段をもっており、忠誠値は高め。まだ《衰滅》というスイーパーも残っており、クリーチャーよりもプレインズウォーカーたちに有利な環境といえます。
しかも、ジェイス、ニッサをはじめとするオリジンのPWが大暴れしており、まだ2種類のサルカンや、ソリンにウギン、忘れちゃいけないナーセットちゃんも残っています。いなくなったのはエルズペスとアショク、アジャニ、チャンドラ、ニッサあたり(しいていえば旧キオーラとリリアナもいた)で、それらと比べて今回のPWは強力なものばかりです。
新環境はおそらく「大PW時代」到来って感じなんじゃないかと勝手に予想したところで、今回の注目度ベスト10を〆させていただきます。
●ベスト10まとめ
1位 ゼンディカーの同盟者、ギデオン & 深海の主、キオーラ & 灯の再覚醒、オブニクシリス
2位 伐採地の滝 & 乱脈な気孔
3位 大草原の川、窪み渓谷、燃えがらの林間地、燻る湿地、梢の眺望、伐採地の滝
4位 忘却蒔き
5位 マラキールの解放者、ドラーナ
6位 下生えの勇者
7位 深水の大喰らい
8位 ハリマーの潮呼び
9位 破滅の道
10位 停滞の罠
番外 竜使いののけ者
※訂正:5位と6位が逆になっていたので訂正しました。(10/19)
●おまけ
番外として選ばせていただきました、《竜使いののけ者》。こんな再録組に貴重な神話枠を使ってくれるな!という皆さんの気持ちは非常によくわかります。しかし、新たなスタンダードの環境にワンチャンス見出せるカードであるのも間違いはありません。
このカードがスタンダードで使われていたときは、《イーオスのレインジャー》というカードからサーチするという流れがあったので、2枚ほどデッキに仕込んでおくのがおしゃれな感じでした。それが新環境ではどうでしょう?
考えられるところでは、《オジュタイの命令》からの釣り上げ、でしょうか。インスタントタイミングで釣り上げ、次のターンにドラゴンさんこんにちは、というのはたしかに厄介には見えます。しかしメインデッキに採用するには、若干カードパワー不足すぎる気もします。
あとは、《乱撃斬》をサイドアウトした相手にサイドインするプランが考えられます。毎ターンのように5/5飛行が出てくるというのは、ゲームになりません。強いことは間違いないのです。
サイドボードに3~4枚入れるのはふつう、という状況になれば、在庫も一気にふっとぶことでしょう。今後の動向が気になる1枚、ではあります。
とりあえずWWK版を買っておきますかね。なんとなくね。
●その前に…
リリースノートが出ていますので、みんな見てね!
『戦乱のゼンディカー』リリースノート
http://mtg-jp.com/rules/docs/faq_bfz_j.html#
●各カード分析
さて、順番に行ってみましょう!まずは第10位から!
第10位 停滞の罠
スタンダードシーンにおいて久しくの間、白のインスタント除去というのは不遇でした。というのも、《剣を鍬に》という強力な除去が消えてしばらくして、《流刑への道》というあまりに強いカードを登場させてしまったために、白本来の役割以上に除去を強くしてしまうとどうなるのか、十分にわかってしまったからです。様々な条件をつけて白の除去を登場させましたが、現在のスタンダードで最も使われているのは《勇敢な姿勢》という条件付き除去です。
今回登場した《停滞の罠》というカードは、ダブルシンボルではあるものの、インスタントタイミングで使えるクリーチャー追放呪文です。それは3マナを構えることで、「カウンター」か「除去」を選ぶことができる、に相違ありません。
旧環境であれば《解消》と《英雄の破滅》を構えるこの動きは、青黒コントロールないしエスパードラゴンの動きであるのですが、新環境ではこれが《風への散乱》と《停滞の罠》を構える動きに代わっていくでしょう。これがスタンダードな動きになるのであれば、エスパードラゴンは無理に青黒タッチ白という形にこだわる必要がなくなり、青白タッチ黒という形になります。純粋なコントロールの基本は青白、という変化は大きいものかと思われます。
心配なのは、《ドロモカの命令》といったカードで対処されてしまうのではないか、という問題があります。しかし、そのカードを採用しているデッキの多くは《搭載歩行機械》も採用しており、こちらに1枚《停滞の罠》を使用することで、生け贄に捧げたくない《停滞の罠》を残すことができます。
3マナというマナ・コストを重いと考えるか、軽いと考えるかはその人次第かとは思いますが、《嵐の息吹のドラゴン》がローテーション落ちした今だからこそ、この新たな白い除去はスタンダードシーンでよくみかけることになる除去となるでしょう。
第9位 破滅への道
《英雄の破滅》がなくなった代わり、という目線で語られることになる《破滅への道》。その大きな違いはインスタントがソーサリーになったこと、そして覚醒がついたこと。
まず、インスタントがソーサリーになったことは大きすぎる変更です。コントロールデッキは、出る前から対処するという動きを、出てから対処するという動きに変更せざるをえません。《カマキリの乗り手》が出てきたとき、それが殴ってくるのを止めることができないのです。ソーサリーになっても問題なく運用できそうなのは、優秀なインスタント除去である《アブザンの魔除け》を有するアブザンというデッキでしょうか。先ほど紹介した《停滞の罠》を選ぶこともできますが、デッキの性質上、《破滅への道》を選んだほうが得が多いはずです。
覚醒がついたことによるアドバンテージは、活かし甲斐があります。7マナで覚醒4というのはかなり重く感じますが、相手のニッサを処理しながら、不要な土地を走らせるという動きは非常に強力です。コントロール使いは、覚醒を上手に使いこなすことによってスタンダードシーンを戦い抜くことになるでしょう。この覚醒という新能力により、注目を集めているのが、これから紹介するカードたちです。
8位 ハリマーの潮呼び
今回のフルスポイラーを見て、七瀬が最も心躍らせたカードがこちらです。アンコモンの中でも注目度では最高順位をつけさせてもらいました。
現在のスタンダードでは《棲み家の防御者》を5マナでプレイし、必要なカードを回収してくる動きが非常に強力です。違ったアプローチではありますが、《ヴリンの神童、ジェイス》がソーサリーやインスタントを再利用するのもやはり強力であり、墓地のカードを柔軟に再利用するという意味ではこの2枚が抜けて強力だと思います。そこに新たなカードが追加される可能性が、あるのです。
まず、3マナ2/3というスペックは、文句のつけようがありません。そして、土地・クリーチャーに飛行をもたせます。なにより、「覚醒をもつ呪文を手札に戻してもよい」のです。
今回のセットで新たに登場した覚醒もちの呪文、特にコントロールデッキなどで使用できそうな呪文には、どのようなものがあるのか見ていきましょう。
白:次元の激高 3白白 ソーサリー 全体除去
白:真っ逆さま 2白 ソーサリー 限定単体除去
青:掴み掛かる水流 青 ソーサリー 単体バウンス
青:氷の猛進 青 ソーサリー 単体足止め
青:水の帳の分離 4青青 ソーサリー 追加ターン
青:風への散乱 1青青 インスタント 打ち消し
黒:湧き上がる瘴気 3黒 ソーサリー 全体マイナス2修正
黒:破滅の道 1黒黒 ソーサリー クリーチャーorPW単体除去
赤:沸き立つ大地 1赤 ソーサリー 全体1点火力
緑:大地の武装 1緑 ソーサリー +1/+1カウンター2個置く
白青:乱動の噴出 1白青 ソーサリー トップバウンス
他にもちょいちょいありますが、主にこんな感じ。環境で有力そうな、カウンター、除去、スイーパー、バウンスが揃っています。《修復の天使》のような明滅があれば申し分ありませんが、そこまで贅沢はいえませんね。
覚醒という能力はおそらくはスタンダードでしか目立った活躍はできないでしょうが、こういうスタンダードならではの能力というのは七瀬が非常に好むカードです。
例えばエスパードラゴンに「覚醒」というキーワードを採用すると…
1マナ 《掴み掛かる水流》
2マナ 《ヴリンの神童、ジェイス》、《深水の大喰らい》、《シルムガルの嘲笑》
3マナ 《ハリマーの潮呼び》、《風への散乱》、《乱動の噴出》、《破滅の道》、《苦い真理》
4マナ 《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》、《オジュタイの命令》、《完全なる終わり》
5マナ 《龍王オジュタイ》、《命運の核心》、《次元の激高》、《灯の再覚醒、オブ・ニクシリス》
6マナ 《龍王シルムガル》、《漂う死、シルムガル》
8マナ 《時を越えた探索》、《精霊龍、ウギン》
Xマナ 《意思の激突》
特殊地形 《精霊龍の安息地》、《乱脈な気孔》
という感じに。
例えばスゥルタイコントロールに「覚醒」というキーワードを採用すると…
1マナ 《掴み掛かる水流》
2マナ 《ヴリンの神童、ジェイス》、《棲み家の防御者》、《深水の大喰らい》
3マナ 《ハリマーの潮呼び》、《風への散乱》、《破滅の道》、《苦い真理》、《スゥルタイ魔除け》
4マナ 《深海の主、キオーラ》、《血の暴君、シディシ》、《衰滅》
5マナ 《囁きの森の精霊》、《灯の再覚醒、オブ・ニクシリス》
6マナ 《黄金牙、タシグル》
8マナ 《時を越えた探索》、《精霊龍、ウギン》
Xマナ 《意思の激突》
特殊地形 《伐採地の滝》
という感じに。
新しい2色土地と合わせて、面白い方向にアーキタイプが強化されたのではないでしょうか。
あとは、なんといってもイラストがきれいで良いよね!Foil無限回収しますので、当たったらぜひ七瀬までお持ちください!
第7位 深水の大喰らい
厄介な2マナ生物というのは、いつの日も強力なものです。特に《オジュタイの命令》や《コラガンの命令》といった、簡単にアドバンテージを稼げるカードがあれば尚のこと。そういう状況で現れたのが、こいつです。
地上のクリーチャーを邪魔しつつ、後半にはドローモードが使えるというのは、コントロール使いにとっては朗報。先ほどの2つのデッキ案にも候補として提示するだけの強さがあります。
そして欠色というのは、自分で使うぶんには《精霊龍、ウギン》と相性が良いです。場を流したあとに接死とドローソースが残っている、というのは結構な悪だと思われます。
同じマナ域に《ヴリンの神童、ジェイス》がいるため、共存できるかどうかがポイントとなりそうですが、弱いカードでないことはたしかですね。
第6位 下生えの勇者
アドバンテージの塊である《クルフィックスの狩猟者》がいなくなったと思ったら、また変なクリーチャーがやってきました。こちらはアドを稼ぐようなものではありませんが、とにかく高い耐性が特徴です。抜本的な除去に耐性はありませんが、赤いデッキだと対処が難しいはずです。
4ターン目に勇者を出して、フェッチ起動で4/4にまで育ちます。コンバットで1:1交換が取れないので、除去を当てられさえしなければ、次のターンからもしつこく場に残り続けます。
相性の良いカードは、+1/+1カウンターを乗せながら格闘できる《ドロモカの命令》や、+1/+1カウンターを2個上乗せできる《アブザンの魔除け》、あとは一部の熱狂的なファンをもつ《硬化した鱗》や、+1/+1カウンターを参照する《毅然さの化身》あたりでしょうか。《抵抗の妙技》で守りながら強化する、というのも厄介な動きですね。
ただ、コントロールデッキ向きなカードかと問われれば、そうでもないため、ダブルシンボルである点も考慮すると、多くのデッキで採用されるカードではないかと思います。
第5位 マラキールの解放者、ドラーナ
「ドラーナ」というアーキタイプを生み出す可能性が高い、非常に強力なレジェンドです。3マナ2/3飛行というのが強いかどうかは別として、全体に+1/+1カウンターを乗せていくその姿は、まさにデッキの中心でしょう。特に《搭載歩行機械》や《荒野の確保》、《ドラゴンの餌》といったトークン生成系のカードと相性が良く、それらのカードは《真面目な訪問者、ソリン》や《嵐の憤怒、コラガン》とも相性が良いので、デッキの方向性がわかりやすいですね。もしドラーナ自体がやられてしまったとしても、《コラガンの命令》といったカードで回収できます。また、このアーキタイプならば、《大いなる狩りの巫師》といったカードにも再び注目が集まるのではないでしょうか。
第4位 忘却蒔き
まず、すべてのデッキに入れることができます。
次に、土地を伸ばすことができます。場合によってはフェッチランドやミシュラランドも奪うことができます。
そして最後に、そもそも本体が5/8です。
以上の点から、多くのデッキに採用される可能性があるカードです。
上陸というキーワードとも相性が良く、例えば土地を4枚出すことができれば、《下生えの勇者》は+1/+1カウンターを4つ積み上げることができ、《マキンディの滑り駆け》は+4/+4修正を受けます。フェッチランドが混ざっていれば、更に修正が追加されるわけです。「ゼンディカーvsエルドラージ」に収録されたこの神話レアは、潜在価値は非常に高いと思われます。
第3位 新デュアルランド
なんか色々な呼ばれ方をしていますが、これらの土地の登場により、2色デッキと4色デッキが大幅に強化されます。フェッチランドの利用価値も大幅に向上しており、序盤の土地の並べ方が以前よりも難しくなることは請け合いです。
第2位 新ミシュラランド
対抗色ミシュラランドの2枚は、今後のスタンダードシーンにおいて、特に次のセットが発売されるまでの間、かなりの活躍が期待できます。いつの時代も、クリーチャーに変化する土地というのはあらゆるシーンで活躍しつづけ、その強さというのは間違いのないものです。そんなミシュラランドが、青緑と、白黒限定で使えるのです。
一方のデッキにミシュラランドが入っていて、もう一方のデッキには入っていない場合、消耗戦を制するのは間違いなく「入っているほう」です。
《伐採地の滝》は呪禁もちの3/3。攻撃時の回避能力に乏しいものの、除去に強く、ミシュラランドとしては理想的な部類です。
《乱脈な気孔》は絆魂もちの2/3。こちらも回避能力に乏しいですが、序盤に減らされたライフを回復してくれるというのは、コントロールデッキにとって、ありがたいものです。
どちらも回避能力がないため、例えば《ハリマーの潮呼び》が場に出ていると使いやすそうには見えます。
覚醒により+3/+3ないし+4/+4されたミシュラランドは異常な強さをもちます。ただし、呪禁でなくなる瞬間があったりするので、個人的には《乱脈な気孔》を覚醒させるのが、スタンダードでは強いんじゃないかと思っています。特に、《破滅への道》や《次元の激高》とは好相性で、覚醒4されれば、とりあえず4/4クリーチャー、起動すれば6/7絆魂という化け物の完成。試合を決めるには十分なサイズです。
《伐採地の滝》と覚醒を組み合わせるなら、インスタントタイミングで覚醒が可能な《風への散乱》でしょうか。3/3クリーチャーに変化し、起動すれば6/6呪禁に変化可能になります。
最後に、ミシュラランドを評価している理由は、覚醒との組み合わせもそうなのですが、何よりプレインズウォーカーに触ることができるという点です。《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》に関しては、ブロッカーを用意できるので難しいかもしれませんが、残りの2体は殴って倒すことができます。コントロールデッキにとって、殴ってPWを倒せるというのは重要なことなのです。
第1位 プレインズウォーカー
こういう選び方はズルい!と思われた方。安心してください。ほとんどは、《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》の評価点です。この化け物の登場により、《太陽の勇者、エルズペス》を失ったデッキたち、特に青白コントロールというデッキは最前線で戦えるレベルに強化されますし、雑に強かったアブザンやジェスカイにもなんとなく、入れることができます。ゼナゴス先生は赤緑だったからデッキを選んだのに、この人は白いだけです。《英雄の破滅》が無くなり、《異端の輝き》も無くなった今、プレインズウォーカーが弱いわけがないのです。ついでに《思考囲い》もないからね。
《深海の主、キオーラ》は色を選ぶものの、デッキのバランスを調整できれば十分に活躍が期待できるカードです。青緑というカラーも、《ヴリンの神童、ジェイス》と《巨森の予見者、ニッサ》というオリジンのトップレアたちと非常に相性が良く、青緑系のデッキがトップメタに食い込んでくるの日は近いでしょう。
《灯の再覚醒、オブ・ニクシリス》に関しては、上の2枚よりもずっと評価は低く見ています。というのも、5マナで出すPWのスペックとしては、低めだからです。ただ、サイドボードに1~2枚取られたりするカードではあると思うので、ある程度の活躍は期待できるでしょう。
今回プレインズウォーカーを1位に選んだ理由は、それらへの対処方法の少なさです。《英雄の破滅》から《破滅への道》になっただけでも不安要素しかないのに、例えば《危険な櫃》は無いですし、《頂点捕食者、ガラク》というお化けもどっかにいきました。《払拭の光》は瞬速を持ちましたがクリーチャー限定になり、残っているのを考えると《完全なる終わり》とかそこらへんのカードぐらいです。プレインズウォーカーへの一番の対処方法は、「殴って倒す」なのですが、新たに登場した3体とも、自衛手段をもっており、忠誠値は高め。まだ《衰滅》というスイーパーも残っており、クリーチャーよりもプレインズウォーカーたちに有利な環境といえます。
しかも、ジェイス、ニッサをはじめとするオリジンのPWが大暴れしており、まだ2種類のサルカンや、ソリンにウギン、忘れちゃいけないナーセットちゃんも残っています。いなくなったのはエルズペスとアショク、アジャニ、チャンドラ、ニッサあたり(しいていえば旧キオーラとリリアナもいた)で、それらと比べて今回のPWは強力なものばかりです。
新環境はおそらく「大PW時代」到来って感じなんじゃないかと勝手に予想したところで、今回の注目度ベスト10を〆させていただきます。
●ベスト10まとめ
1位 ゼンディカーの同盟者、ギデオン & 深海の主、キオーラ & 灯の再覚醒、オブニクシリス
2位 伐採地の滝 & 乱脈な気孔
3位 大草原の川、窪み渓谷、燃えがらの林間地、燻る湿地、梢の眺望、伐採地の滝
4位 忘却蒔き
5位 マラキールの解放者、ドラーナ
6位 下生えの勇者
7位 深水の大喰らい
8位 ハリマーの潮呼び
9位 破滅の道
10位 停滞の罠
番外 竜使いののけ者
※訂正:5位と6位が逆になっていたので訂正しました。(10/19)
●おまけ
番外として選ばせていただきました、《竜使いののけ者》。こんな再録組に貴重な神話枠を使ってくれるな!という皆さんの気持ちは非常によくわかります。しかし、新たなスタンダードの環境にワンチャンス見出せるカードであるのも間違いはありません。
このカードがスタンダードで使われていたときは、《イーオスのレインジャー》というカードからサーチするという流れがあったので、2枚ほどデッキに仕込んでおくのがおしゃれな感じでした。それが新環境ではどうでしょう?
考えられるところでは、《オジュタイの命令》からの釣り上げ、でしょうか。インスタントタイミングで釣り上げ、次のターンにドラゴンさんこんにちは、というのはたしかに厄介には見えます。しかしメインデッキに採用するには、若干カードパワー不足すぎる気もします。
あとは、《乱撃斬》をサイドアウトした相手にサイドインするプランが考えられます。毎ターンのように5/5飛行が出てくるというのは、ゲームになりません。強いことは間違いないのです。
サイドボードに3~4枚入れるのはふつう、という状況になれば、在庫も一気にふっとぶことでしょう。今後の動向が気になる1枚、ではあります。
とりあえずWWK版を買っておきますかね。なんとなくね。
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