GP神戸直前!スタンダードメタゲーム予想
2015年11月17日 Magic: The Gathering コメント (3)●現スタンダード環境は「3強」、しかしそのバリエーションは多様。
「アブザン」「ジェスカイ」「エスパー」の3つのアーキタイプが環境のトップメタです。
「アブザン」は最も柔軟かつデッキパワーが高いデッキで、ほとんどのデッキ相手に互角以上の戦いを挑めるため、特に日本で人気の高いアーキタイプです。最も構成が固まっているため対策も取られやすいですが、それでも勝てるのがアブザン。そのカードパワー、デッキパワーの高さは疑いようがありません。GP神戸でも最大勢力となるのはほぼ間違いないでしょう。
「ジェスカイ」はアブザンの対抗馬として活躍しており、その内容も多様を極めます。「ダークジェスカイ」は特に海外勢から人気が高く、長期戦に非常に強く構成されています。プレイングは難しいですが、苦手とするアーキタイプも数少ないことから、このデッキを採用するプレイヤーも多いはずです。「ジェスカイテンポ」「ジェスカイウィンズ」と呼ばれているデッキは純正3色で構成されており、それゆえにギデオンをデッキに採用することができ、非常に攻撃的な構成。「ジェスカイドラゴン」はジェスカイ系で最もデッキパワーが高いと評されており、個人的にも好みのデッキです。
「エスパー」は、上の2つのデッキどちらにも優位を取れる数少ないデッキとして環境を支配しかねないデッキです。エスパーのなかでも最大勢力になりそうなのが、「エスパードラゴン」。デッキパワーは環境随一で、苦手としていたアグロデッキと《はじける破滅》が数を減らしたことから猛威をふるいつつあります。GP神戸直前の大規模大会「GPブリュッセル」で優勝するなどの活躍を見せているため、採用するプレイヤーも多いことが予想されます。「エスパーコントロール」はドラゴンを採用しておらず、現環境に数少ない古典的な純正のコントロールデッキです。「エスパートークン」はダークジェスカイなどに明確に強いミッドレンジであり、今月に入ってから流行をみせたアーキタイプです。「エスパーミッドレンジ」は「エスパードラゴン」と「エスパーコントロール」の中間のようなグッドスタッフであり、カードパワーの高さが明確で、アブザンに十分対抗できる強いデッキのひとつといえます。
●活躍をみせる「ラリー」「ランプ」といったTier2デッキたち
今一番注目を浴びているであろうデッキが、「4色ラリー」と呼ばれるコンボデッキです。その活躍はめざましく、GPブリュッセルでTOP8に3名を送り込んでいます。しかし、その3名全員が優勝者であるLukas Blohon操る「エスパードラゴン」に、準々決勝、準決勝、決勝と、ものの見事に完全敗北しており、コントロールデッキとのマッチアップには不安が残ります。「アブザン」にも天敵アナフェンザが当然採用されているため、決して相性が良いとは言えません。対峙する場合は、戦い方をどれだけ心得ているかどうかで勝率に大きく差が出るので、一度はマッチアップしてみるとよいかと思います。
「ランプ」デッキは、一時は「エスパーコントロール」相手に圧倒的なマッチアップ相性と騒がれたのですが、「無限の抹消」の採用により、逆に食い物にされるという現状に苦しんでいます。緑を中心として、その他どんな色の組み合わせでもデッキパワーは非常に高いだけに、工夫したレシピを持ち込むプレイヤーも多いでしょう。
「アタルカレッド」は環境初期からTier1の座にあったデッキですが、アブザンとの相性の悪さ、対策の取りやすさから激しいメタに晒され、苦しい立場に立たされています。しかし、相性の良い低速のコントロールデッキが勢力を拡大していることから、メタゲームが1周してくればチャンスのあるデッキです。
これらのデッキに共通していえるのは、「対策の取られやすさ」です。対策を取られると勝機の薄いデッキは淘汰され、メタゲーム待ちになりやすいです。
その他、一時環境でTier1であった「緑白大変異」や、日本でしばしば活躍している「マルドゥ」や「ティムール」、ファンデッキとは呼べない強さの「スケイル(鱗)」や「赤緑ランドフォール(上陸)」など、様々なデッキがひしめき合っています。
では、メタゲームについて各デッキをもう少し詳しくみていきましょう。
●最大勢力 「アブザン」 予想支配率 約25%(4人に1人)
《搭載歩行機械》、《始まりの木の管理人》、《棲み家の防御者》、《先頭に立つ者、アナフェンザ》、《包囲サイ》、《風番いのロック》という、《包囲サイ》を筆頭とする各マナ域を代表する超強力クリーチャー陣に加え、環境を代表とするプレインズウォーカーである《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》という布陣は圧倒的の一言。更にそれらに加えて《ドロモカの命令》、《アブザンの魔除け》、《残忍な切断》といった、優良スペルが一切の隙を見せません。バリエーションとしては、《絹包み》や《究極の価格》といった2マナ除去、《黄金牙、タシグル》といったエース級のクリーチャーが採用されることが多いです。また、ここから青や赤をタッチした型も存在し、それぞれ《影響力の行使》や《龍王オジュタイ》、《はじける破滅》といった優良スペルを採用することができます。
得意とするアーキタイプ:アグロ系ほぼ全般
苦手とするアーキタイプ:「エスパードラゴン」「エスパーコントロール」など
ほとんどのアーキタイプに対して互角以上に戦える丸さがデッキの特徴です。その上で、赤アグロ系のデッキに強く、ラリー系のデッキ相手にも《先頭に立つ者、アナフェンザ》が一番の対策カードとなるため相性が良いです。また最近では、「ダークジェスカイ」といったデッキにもカードパワーで勝るため、勝率に差が生じているようです。
一方で、エスパー系のデッキ全般は「アブザン」に対するキラーカードが多く存在するため、対戦は厳しいものになるでしょう。詳しくは以下に記載します。
<アブザンに有利をとれるカード一覧>
《ヴリンの神童、ジェイス》、《僧院の導師》、《龍王オジュタイ》、《龍王シルムガル》、《灯の再覚醒、オブ・ニクシリス》
カード一覧で一目瞭然ですが、エスパー系のデッキに採用されるカードはそもそもがハイスペックであるのに加えて、そのほとんど全てがアブザンに優位の取れるカードばかりなのです。
●対抗勢力その1A 「ダークジェスカイ」 予想支配率 10%(10人に1人)
《ヴリンの神童、ジェイス》、《カマキリの乗り手》、《黄金牙、タシグル》といった優秀なクリーチャーを、《はじける破滅》を代表とする豊富な除去呪文で支え、最終的には《コラガンの命令》や《オジュタイの命令》といったアドバンテージを稼げるカードで更なる有利をとる、長期戦にも強いミッドレンジデッキです。
得意とするアーキタイプ:ミッドレンジ系ほぼ全般
苦手とするアーキタイプ:「エスパーコントロール」「エスパートークン」「ランプ」など
プレイングの難しさから敬遠され、扱いやすい「エスパードラゴン」のようなデッキに流れる人が多いかと予想します。「エスパードラゴン」に対策をとるなら、それこそ《はじける破滅》が使える「ダークジェスカイ」は強そうに思えるのですが。
●対抗勢力その1B 「ジェスカイ」 予想支配率 5%(20人に1人)
黒をタッチしないぶん、《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》などをメインデッキに採用した、よりアグレッシブなジェスカイです。ジェスカイ本来のテンポの良さが特徴で、「ダークジェスカイ」とは別物のデッキです。特に「アブザン」や「ダークジェスカイ」、「コントロール」などを意識して構築しているデッキが多く、《搭載歩行機械》や《ヴリンの神童、ジェイス》、《カマキリの乗り手》に《ピア・ナラーとキアン・ナラー》といった、対処されにくいクリーチャーが多いのも特徴です。
得意とするアーキタイプ:「アブザン」「ダークジェスカイ」など
苦手とするアーキタイプ:「エスパードラゴン」「ランプ」など
この他、「ジェスカイドラゴン」「ジェスカイトークン」などのマイナーアーキタイプなどを含めて、「ジェスカイ」は約15%(6-7人に1人)の使用率と予想します。
●対抗勢力その2A 「エスパードラゴン」 予想支配率 10%(10人に1人)
《龍王オジュタイ》と《龍王シルムガル》の2大ドラゴンを操るコントロールデッキですが、メインボードから《ヴリンの神童、ジェイス》を採用することによって最大勢力である「アブザン」に決定的有利を気づこうという構築が見られます。現代の対抗呪文こと《シルムガルの嘲笑》と、ライフを支える《忌呪の発動》、万能追放除去の《完全なる終わり》、そして強力なドロースペルである《時を越えた探索》がデッキを支えます。「エスパーコントロール」と数を分け合うことが予想されます。
得意とするアーキタイプ:「アブザン」「ジェスカイ」「ラリー」
苦手とするアーキタイプ:「アタルカレッド」「マルドゥ」「ティムール」「ダークジェスカイ」
<エスパードラゴンに有利をとれるカード一覧>
《はじける破滅》、《搭載歩行機械》、《軍族童の突発》など
基本的にドラゴンに対策を打たれると急に苦しくなります。特に《はじける破滅》が強い環境が続いたので、しばらく鳴りを潜めていたところがあります。《搭載歩行機械》も天敵といえるカードで、場に並ぶと苦戦は必至です。この他、横並び戦術に弱い傾向にあるので、トークンデッキも苦手です。もちろんアグロデッキ全般も苦手としています。
●対抗勢力その2B 「エスパーコントロール」 予想支配率 5%(20人に1人)
「エスパードラゴン」とは異なり、ドラゴンを採用せず、よりコントロールカードの枚数を増やしたものです。特にプレインズウォーカーが多めに採用されていることが多く、コントロールデッキの最有力です。「エスパードラゴン」と数を分け合うことが予想されます。
得意とするアーキタイプ:「アブザン」「ジェスカイ」「ダークジェスカイ」「ラリー」
苦手とするアーキタイプ:「アタルカレッド」などアグロ系全般、「ティムール」、同系デッキ
<エスパーコントロールに有利をとれるカード一覧>
《強迫》、《搭載歩行機械》、《乱脈な気孔》、プレインズウォーカー全般
「エスパードラゴン」と比べると、メインから《衰滅》を多く採用しているため、トークン系のデッキに対しても十分な強さをもっています。ただし、プレインズウォーカーの連打などの強い動きにはっきりと弱く、また同系対決だと引き分けも多くなるのが問題点。
●対抗勢力その3 「エスパートークン」 予想支配率 5%(20人に1人)
上記の2種類のエスパーデッキとは異なり、白黒にタッチ青という形のトークン主軸のデッキ。今月に入って流行を見せているアーキタイプです。特に「はじける破滅」などの単体除去に強く、除去が多いことからミッドレンジ系のデッキ相手全般に強いです。
得意とするアーキタイプ:「アブザン」「ジェスカイ」「ダークジェスカイ」など
苦手とするアーキタイプ:「ティムール」「ランプ」「エスパードラゴン」など
これら「エスパー」に分類されるデッキを全て合わせると約20%(5人に1人)ほどの支配率と予想されます。
●ここまでのまとめ
アブザン系 25%
エスパー系 20% (ドラゴン10%、コントロール5%、トークン5%)
ジェスカイ系 15% (ダーク10%、純正5%)
3つのアーキタイプ合わせて、「約60%の環境支配率」と予想します。
赤緑アグロ系 6%前後
ラリー系 6%前後
ランプ系 6%前後
マルドゥ系 6%前後
ティムール系 3%前後
大変異系 3%前後
赤黒系 3%前後
緑黒系 3%前後
以上いずれにも該当せず 3-4%
●プロツアー「戦乱のゼンディカー」メタゲームからの推移予想
ジェスカイ系 18.8% ⇒ 形を変えながら維持
赤アグロ系 18.3% ⇒ 約1/3 (6%前後)
「大変異」系 17.4% ⇒ 超大幅減少 (3%前後)
エスパー系12.0% ⇒ 倍増 (25%)
アブザン系9.3% ⇒ 約3倍 (25%)
4色/5色系 8.4% ⇒ ラリーなどに
その他15.8%
●今回のメタゲーム予想の理由
現在、日本勢の《包囲サイ》に対する信頼度は相当高いと思われます。各大規模大会でも十分な結果を残し続けており、環境支配率33%程度を予想していました。しかし、直前になって「エスパードラゴン」などの躍進が見られたため、一部のアブザンプレイヤーが別なデッキにシフトする可能性が高いと思います。
「ジェスカイ」に関しては非常に優れたデッキであるため、ジェスカイ使いがそのまま持ち込んでくると思われます。しかし、エスパーのほうがアブザンに有利がとれると判断した場合は「エスパードラゴン」に切り替える可能性が高いです。採用カード的にも、ジェイスとオジュタイさえいれば組めるので、問題ないでしょう。
「エスパー」は今回のメタゲームの中心になることが予想されます。有利がとれるはずの「アタルカレッド」のようなアグロデッキはやはり《包囲サイ》を恐れて数は減らしているでしょうが、このようなメタを読んで持ち込む人も一定数いるでしょう。
基本は「アブザン」vs「エスパー」の構図に「ジェスカイ」が割って入ることができるか。
●グランプリという大会を考えるにあたって
グランプリは、プロツアーではありません。つまり、普段競技レベルでプレイしていないプレイヤーも多く参加するわけです。
特に持ち込みやすいであろうデッキは、比較的安価に組むことができる「マルドゥ」や「ティムール」、「緑黒ハスク」あたりでしょうか。特に「マルドゥ」は根強い人気があり、この勢力に「エスパードラゴン」がかなり苦しめられるのではないか、というのが七瀬の読みです。
全員がジェイスを持っているわけではありません。
全員がギデオンを持っているわけではありません。
全員がフェッチランドを一式持っているわけではありません。
そして、現在のスタンダードは各カードが非常に高性能です。
そういう点を踏まえると、主要メタ以外のデッキは予想しやすく、柔軟なデッキつまり「アブザン」や「ジェスカイ」が結果を残しやすいのも納得がいきます。
当然、上位層のメタゲームはまた違ったものになるでしょうが、全体的にはこんな感じかと予想します。
当たるも八卦、当たらぬも八卦。信じるかどうかは、あなた次第です。
「アブザン」「ジェスカイ」「エスパー」の3つのアーキタイプが環境のトップメタです。
「アブザン」は最も柔軟かつデッキパワーが高いデッキで、ほとんどのデッキ相手に互角以上の戦いを挑めるため、特に日本で人気の高いアーキタイプです。最も構成が固まっているため対策も取られやすいですが、それでも勝てるのがアブザン。そのカードパワー、デッキパワーの高さは疑いようがありません。GP神戸でも最大勢力となるのはほぼ間違いないでしょう。
「ジェスカイ」はアブザンの対抗馬として活躍しており、その内容も多様を極めます。「ダークジェスカイ」は特に海外勢から人気が高く、長期戦に非常に強く構成されています。プレイングは難しいですが、苦手とするアーキタイプも数少ないことから、このデッキを採用するプレイヤーも多いはずです。「ジェスカイテンポ」「ジェスカイウィンズ」と呼ばれているデッキは純正3色で構成されており、それゆえにギデオンをデッキに採用することができ、非常に攻撃的な構成。「ジェスカイドラゴン」はジェスカイ系で最もデッキパワーが高いと評されており、個人的にも好みのデッキです。
「エスパー」は、上の2つのデッキどちらにも優位を取れる数少ないデッキとして環境を支配しかねないデッキです。エスパーのなかでも最大勢力になりそうなのが、「エスパードラゴン」。デッキパワーは環境随一で、苦手としていたアグロデッキと《はじける破滅》が数を減らしたことから猛威をふるいつつあります。GP神戸直前の大規模大会「GPブリュッセル」で優勝するなどの活躍を見せているため、採用するプレイヤーも多いことが予想されます。「エスパーコントロール」はドラゴンを採用しておらず、現環境に数少ない古典的な純正のコントロールデッキです。「エスパートークン」はダークジェスカイなどに明確に強いミッドレンジであり、今月に入ってから流行をみせたアーキタイプです。「エスパーミッドレンジ」は「エスパードラゴン」と「エスパーコントロール」の中間のようなグッドスタッフであり、カードパワーの高さが明確で、アブザンに十分対抗できる強いデッキのひとつといえます。
●活躍をみせる「ラリー」「ランプ」といったTier2デッキたち
今一番注目を浴びているであろうデッキが、「4色ラリー」と呼ばれるコンボデッキです。その活躍はめざましく、GPブリュッセルでTOP8に3名を送り込んでいます。しかし、その3名全員が優勝者であるLukas Blohon操る「エスパードラゴン」に、準々決勝、準決勝、決勝と、ものの見事に完全敗北しており、コントロールデッキとのマッチアップには不安が残ります。「アブザン」にも天敵アナフェンザが当然採用されているため、決して相性が良いとは言えません。対峙する場合は、戦い方をどれだけ心得ているかどうかで勝率に大きく差が出るので、一度はマッチアップしてみるとよいかと思います。
「ランプ」デッキは、一時は「エスパーコントロール」相手に圧倒的なマッチアップ相性と騒がれたのですが、「無限の抹消」の採用により、逆に食い物にされるという現状に苦しんでいます。緑を中心として、その他どんな色の組み合わせでもデッキパワーは非常に高いだけに、工夫したレシピを持ち込むプレイヤーも多いでしょう。
「アタルカレッド」は環境初期からTier1の座にあったデッキですが、アブザンとの相性の悪さ、対策の取りやすさから激しいメタに晒され、苦しい立場に立たされています。しかし、相性の良い低速のコントロールデッキが勢力を拡大していることから、メタゲームが1周してくればチャンスのあるデッキです。
これらのデッキに共通していえるのは、「対策の取られやすさ」です。対策を取られると勝機の薄いデッキは淘汰され、メタゲーム待ちになりやすいです。
その他、一時環境でTier1であった「緑白大変異」や、日本でしばしば活躍している「マルドゥ」や「ティムール」、ファンデッキとは呼べない強さの「スケイル(鱗)」や「赤緑ランドフォール(上陸)」など、様々なデッキがひしめき合っています。
では、メタゲームについて各デッキをもう少し詳しくみていきましょう。
●最大勢力 「アブザン」 予想支配率 約25%(4人に1人)
《搭載歩行機械》、《始まりの木の管理人》、《棲み家の防御者》、《先頭に立つ者、アナフェンザ》、《包囲サイ》、《風番いのロック》という、《包囲サイ》を筆頭とする各マナ域を代表する超強力クリーチャー陣に加え、環境を代表とするプレインズウォーカーである《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》という布陣は圧倒的の一言。更にそれらに加えて《ドロモカの命令》、《アブザンの魔除け》、《残忍な切断》といった、優良スペルが一切の隙を見せません。バリエーションとしては、《絹包み》や《究極の価格》といった2マナ除去、《黄金牙、タシグル》といったエース級のクリーチャーが採用されることが多いです。また、ここから青や赤をタッチした型も存在し、それぞれ《影響力の行使》や《龍王オジュタイ》、《はじける破滅》といった優良スペルを採用することができます。
得意とするアーキタイプ:アグロ系ほぼ全般
苦手とするアーキタイプ:「エスパードラゴン」「エスパーコントロール」など
ほとんどのアーキタイプに対して互角以上に戦える丸さがデッキの特徴です。その上で、赤アグロ系のデッキに強く、ラリー系のデッキ相手にも《先頭に立つ者、アナフェンザ》が一番の対策カードとなるため相性が良いです。また最近では、「ダークジェスカイ」といったデッキにもカードパワーで勝るため、勝率に差が生じているようです。
一方で、エスパー系のデッキ全般は「アブザン」に対するキラーカードが多く存在するため、対戦は厳しいものになるでしょう。詳しくは以下に記載します。
<アブザンに有利をとれるカード一覧>
《ヴリンの神童、ジェイス》、《僧院の導師》、《龍王オジュタイ》、《龍王シルムガル》、《灯の再覚醒、オブ・ニクシリス》
カード一覧で一目瞭然ですが、エスパー系のデッキに採用されるカードはそもそもがハイスペックであるのに加えて、そのほとんど全てがアブザンに優位の取れるカードばかりなのです。
●対抗勢力その1A 「ダークジェスカイ」 予想支配率 10%(10人に1人)
《ヴリンの神童、ジェイス》、《カマキリの乗り手》、《黄金牙、タシグル》といった優秀なクリーチャーを、《はじける破滅》を代表とする豊富な除去呪文で支え、最終的には《コラガンの命令》や《オジュタイの命令》といったアドバンテージを稼げるカードで更なる有利をとる、長期戦にも強いミッドレンジデッキです。
得意とするアーキタイプ:ミッドレンジ系ほぼ全般
苦手とするアーキタイプ:「エスパーコントロール」「エスパートークン」「ランプ」など
プレイングの難しさから敬遠され、扱いやすい「エスパードラゴン」のようなデッキに流れる人が多いかと予想します。「エスパードラゴン」に対策をとるなら、それこそ《はじける破滅》が使える「ダークジェスカイ」は強そうに思えるのですが。
●対抗勢力その1B 「ジェスカイ」 予想支配率 5%(20人に1人)
黒をタッチしないぶん、《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》などをメインデッキに採用した、よりアグレッシブなジェスカイです。ジェスカイ本来のテンポの良さが特徴で、「ダークジェスカイ」とは別物のデッキです。特に「アブザン」や「ダークジェスカイ」、「コントロール」などを意識して構築しているデッキが多く、《搭載歩行機械》や《ヴリンの神童、ジェイス》、《カマキリの乗り手》に《ピア・ナラーとキアン・ナラー》といった、対処されにくいクリーチャーが多いのも特徴です。
得意とするアーキタイプ:「アブザン」「ダークジェスカイ」など
苦手とするアーキタイプ:「エスパードラゴン」「ランプ」など
この他、「ジェスカイドラゴン」「ジェスカイトークン」などのマイナーアーキタイプなどを含めて、「ジェスカイ」は約15%(6-7人に1人)の使用率と予想します。
●対抗勢力その2A 「エスパードラゴン」 予想支配率 10%(10人に1人)
《龍王オジュタイ》と《龍王シルムガル》の2大ドラゴンを操るコントロールデッキですが、メインボードから《ヴリンの神童、ジェイス》を採用することによって最大勢力である「アブザン」に決定的有利を気づこうという構築が見られます。現代の対抗呪文こと《シルムガルの嘲笑》と、ライフを支える《忌呪の発動》、万能追放除去の《完全なる終わり》、そして強力なドロースペルである《時を越えた探索》がデッキを支えます。「エスパーコントロール」と数を分け合うことが予想されます。
得意とするアーキタイプ:「アブザン」「ジェスカイ」「ラリー」
苦手とするアーキタイプ:「アタルカレッド」「マルドゥ」「ティムール」「ダークジェスカイ」
<エスパードラゴンに有利をとれるカード一覧>
《はじける破滅》、《搭載歩行機械》、《軍族童の突発》など
基本的にドラゴンに対策を打たれると急に苦しくなります。特に《はじける破滅》が強い環境が続いたので、しばらく鳴りを潜めていたところがあります。《搭載歩行機械》も天敵といえるカードで、場に並ぶと苦戦は必至です。この他、横並び戦術に弱い傾向にあるので、トークンデッキも苦手です。もちろんアグロデッキ全般も苦手としています。
●対抗勢力その2B 「エスパーコントロール」 予想支配率 5%(20人に1人)
「エスパードラゴン」とは異なり、ドラゴンを採用せず、よりコントロールカードの枚数を増やしたものです。特にプレインズウォーカーが多めに採用されていることが多く、コントロールデッキの最有力です。「エスパードラゴン」と数を分け合うことが予想されます。
得意とするアーキタイプ:「アブザン」「ジェスカイ」「ダークジェスカイ」「ラリー」
苦手とするアーキタイプ:「アタルカレッド」などアグロ系全般、「ティムール」、同系デッキ
<エスパーコントロールに有利をとれるカード一覧>
《強迫》、《搭載歩行機械》、《乱脈な気孔》、プレインズウォーカー全般
「エスパードラゴン」と比べると、メインから《衰滅》を多く採用しているため、トークン系のデッキに対しても十分な強さをもっています。ただし、プレインズウォーカーの連打などの強い動きにはっきりと弱く、また同系対決だと引き分けも多くなるのが問題点。
●対抗勢力その3 「エスパートークン」 予想支配率 5%(20人に1人)
上記の2種類のエスパーデッキとは異なり、白黒にタッチ青という形のトークン主軸のデッキ。今月に入って流行を見せているアーキタイプです。特に「はじける破滅」などの単体除去に強く、除去が多いことからミッドレンジ系のデッキ相手全般に強いです。
得意とするアーキタイプ:「アブザン」「ジェスカイ」「ダークジェスカイ」など
苦手とするアーキタイプ:「ティムール」「ランプ」「エスパードラゴン」など
これら「エスパー」に分類されるデッキを全て合わせると約20%(5人に1人)ほどの支配率と予想されます。
●ここまでのまとめ
アブザン系 25%
エスパー系 20% (ドラゴン10%、コントロール5%、トークン5%)
ジェスカイ系 15% (ダーク10%、純正5%)
3つのアーキタイプ合わせて、「約60%の環境支配率」と予想します。
赤緑アグロ系 6%前後
ラリー系 6%前後
ランプ系 6%前後
マルドゥ系 6%前後
ティムール系 3%前後
大変異系 3%前後
赤黒系 3%前後
緑黒系 3%前後
以上いずれにも該当せず 3-4%
●プロツアー「戦乱のゼンディカー」メタゲームからの推移予想
ジェスカイ系 18.8% ⇒ 形を変えながら維持
赤アグロ系 18.3% ⇒ 約1/3 (6%前後)
「大変異」系 17.4% ⇒ 超大幅減少 (3%前後)
エスパー系12.0% ⇒ 倍増 (25%)
アブザン系9.3% ⇒ 約3倍 (25%)
4色/5色系 8.4% ⇒ ラリーなどに
その他15.8%
●今回のメタゲーム予想の理由
現在、日本勢の《包囲サイ》に対する信頼度は相当高いと思われます。各大規模大会でも十分な結果を残し続けており、環境支配率33%程度を予想していました。しかし、直前になって「エスパードラゴン」などの躍進が見られたため、一部のアブザンプレイヤーが別なデッキにシフトする可能性が高いと思います。
「ジェスカイ」に関しては非常に優れたデッキであるため、ジェスカイ使いがそのまま持ち込んでくると思われます。しかし、エスパーのほうがアブザンに有利がとれると判断した場合は「エスパードラゴン」に切り替える可能性が高いです。採用カード的にも、ジェイスとオジュタイさえいれば組めるので、問題ないでしょう。
「エスパー」は今回のメタゲームの中心になることが予想されます。有利がとれるはずの「アタルカレッド」のようなアグロデッキはやはり《包囲サイ》を恐れて数は減らしているでしょうが、このようなメタを読んで持ち込む人も一定数いるでしょう。
基本は「アブザン」vs「エスパー」の構図に「ジェスカイ」が割って入ることができるか。
●グランプリという大会を考えるにあたって
グランプリは、プロツアーではありません。つまり、普段競技レベルでプレイしていないプレイヤーも多く参加するわけです。
特に持ち込みやすいであろうデッキは、比較的安価に組むことができる「マルドゥ」や「ティムール」、「緑黒ハスク」あたりでしょうか。特に「マルドゥ」は根強い人気があり、この勢力に「エスパードラゴン」がかなり苦しめられるのではないか、というのが七瀬の読みです。
全員がジェイスを持っているわけではありません。
全員がギデオンを持っているわけではありません。
全員がフェッチランドを一式持っているわけではありません。
そして、現在のスタンダードは各カードが非常に高性能です。
そういう点を踏まえると、主要メタ以外のデッキは予想しやすく、柔軟なデッキつまり「アブザン」や「ジェスカイ」が結果を残しやすいのも納得がいきます。
当然、上位層のメタゲームはまた違ったものになるでしょうが、全体的にはこんな感じかと予想します。
当たるも八卦、当たらぬも八卦。信じるかどうかは、あなた次第です。
コメント
リンクさせていただきました。
今回の環境分析もわかりやすくて非常に参考になりました
以前のエスパートークンの翻訳記事も、雛形が確立されていない状況では非常に参考になりましたので、これからも頑張って下さい
ありがとうございます!感想いただけると励みになります^^
>>ポッキーさん
こちらこそ、はじめまして。参考になった記事があれば幸いです!
「エスパートークン」と呼ばれる「白黒」デッキは七瀬自身、流行前から考えていたアーキタイプなので、現在の個人的なリストは、世間に出回っているリストよりもずっと自信あります。もしよければそちらもご覧いただけると嬉しいです。
特にアブザン、ジェスカイ、エスパーの上位メタ3種に優位が取れるのが強みかとは思いますが、オジュタイが苦手なので、 流行にあわせて《荒廃した湿原》を増やすか、サイドに《自傷疵》を1~2枚取ることで相性を改善できそうです。